メニュー

深田地質研究所年報

TOP > 事業内容 > 研究事業 > 深田地質研究所年報 > 財団法人深田地質研究所年報 第4号 2003

財団法人深田地質研究所年報 第4号 2003


営団地下鉄11号線の土質ボ-リングNo.39試料の珪藻土
Diatomus of Soil boring No. 39, Tokyo Metropolitan subway No. 11, Kinsityo, Sumida-ku, Tokyo City
藤江 力・深田淳夫・小林英一・堀口隆士
FUJIE Tsutomu, FUKADA Atsuo, KOBAYASHI Eiichi and HORIGUCHI Takahito

要旨:明星学園からの紹介で帝都高速度交通営団の建設本部工事部環境対策課の御好意により地下鉄11号線の墨田区錦糸町4-15の土質ボ-リングNo.39の試料他を貸与して頂き,埋没段丘ロ-ム層直上での4試料の珪藻の分析を行ったので,その結果を報告する.
キ-ワ-ド:珪藻分析,埋没段丘直上,墨田区低地,東京

国分寺崖線の地形と地質 その1国立市富士本1~調布市佐須町4区間
Geomorhporogy and Geology in Kokubunji-gaisen No. 1
Fujimoto1, Kunitati City – Sasu4 ,Tyofu City section
藤江 力
FUJIE Tsutomu

要旨:武蔵野台地(主に古多摩川の扇状地面)の地形発達史を検討するために,まず台地の南縁を画する通称の国分寺崖線沿いの国立市の富士本1丁目から調布市の佐須4丁目の区間の地形解析と現地視察の結果を,その1として報告する.
キ-ワ-ド:地形解析,国分寺崖線,東京,地形

地形解析における三角斜面について その10 手取川「白峰地区」の三角斜面
On the Trigonal Shaped Slope in the Geomorophic Analysis -No.10
The Trigonal Shaped Slope in Siramine district, Japan
藤江 力
FUJIE Tsutomu

要旨:今回の三角斜面は,石川県の手取川上流の「白峰地区」で検討を行った.「白峰地区」の地質は中生界の手取層群(中部ジュラ~下部白亜系)が広く分布し,山地の南側に新第三系~第四系の火山岩類が覆っている.調査の結果三角斜面の分布,形状と型式などに特徴が認められた.
キーワード:三角斜面,白峰地区,地形解析

地すべりに伴う粘土質試料の磁気特性と微細組織─神戸層群の西畑・豊岡北地域の例─
Magnetic properties and microfabrics of clayey samples related to landslide – examples of Nishihata and Toyookakita area in Kobe Group –
川村喜一郎
KAWAMURA Kiichiro

Abstract: Magnetic hysteresis, magnetic susceptibility and its anisotropy (AMS) were measured to estimate microfabrics of some Kobe Group clayey samples. One was collected from inside fault of the Nishihata lateral-spread, and the other was collected from both lithologies 1 and 4 of the Kamikume tuff in the Toyookakita landslide area. From the results of magnetic hysteresis, all the magnetic susceptibility and its anisotropy in the samples is highly contributed by paramagnetic minerals as clay minerals. Therefore, the AMS represents alignment pattern of the clay mineral grains in the samples. In the Nishihata lateral-spread sample, the clay mineral grains align E-W direction, which is parallel to the fault direction. In the Toyookakita landslide two samples, the clay mineral grains align approximately E-W direction, which might be related to the movement direction of the landslide.
キーワード:帯磁率異方性,VSM,すべり面粘土,微細組織,常磁性寄与率
Keywords: anisotoropy of magnetic susceptibility, VSM, slip surface clay, microfabric, paramagnetic contribution

国際ジュラ系小委員会活動の歴史
Short History of the activities of the International Subcommission on Jurassic Stratigraphy
佐藤 正
SATO Tadashi

要旨:IUGS内に設けられた国際層位学委員会の小委員会であるジュラ系小委員会は,IUGSの設立以前からIGCの委員会として活動してきた.その科学的な活動の主な課題はジュラ系の世界的な標準層序区分の確立である.これまでにいくつかのシンポジウムを通して現在広く使われている階の区分や群集帯が世界のジュラ系研究者の討議の末に設定されている.そこに至るまでの歴史を振り返る.

三次元写真測量による数値地形モデルの作成法~ADAM MPS-2を利用した斜め露頭写真の例~
How to make DTM of geological outcrop by stereo-photogrammetry, a example of using ADAM MPS-2.
藤井幸泰
FUJII Yukiyasu

要旨:近年,写真測量を用いた地質学および応用地質学的研究が増えている.とはいえ写真測量は高価な機器や専門的知識・能力を必要とするため,まだまだ敷居の高い解析手法である.この報文では小型解析図化機を用いた地質露頭スケールの数値地形モデル作成法について,写真測量の原理を交えながら具体的に解説する.

北海道白亜系産カンザシゴカイ類
Some Cretaceous serpulids from Hokkaido,Japan
小畠郁生
OBATA Ikuo

要旨:北海道の大夕張地域上巻沢,滝ノ沢中流,下夕張のシュウパロ湖南,上羽幌の中ノ二股川流域の白亜系から産出した管棲多毛類の標本それぞれの形態的特徴とその産状ならびに地質時代につき記述する.いずれも棲管を死んだアンモナイト住房に付けて生活したカンザシゴカイ類で,その属種は暫定的にSerpulid sp. と同定するにとどめる.地質時代はセノマニアン期からサントニアン期にわたる材料である.これらの標本採集に当たっては,とくに故川下由太郎氏による貢献が大であったことを明記して謝意を表する.
キーワード:北海道,白亜系,カンザシゴカイ類,アンモナイト住房,川下由太郎

岩盤分類の位置づけとその内容についての考察
Some Consideration on Situation and Substance of Rock Classification
武内俊昭
TAKEUCHI Toshiaki

要旨:岩盤分類については,その要素についてISOでの基準化を受けて現在日本でも国内基準を作成するための議論がすすめられている.一方,新たな岩盤分類が外国から導入され,わが国の既往の岩盤分類を再検討する動きもある.このような中で岩盤の分類を建設の流れのなかでどのように位置付け,どう適用すべきかについて,吉中(1993)が示したフローに沿って現存する幾つかの岩盤分類を参照しながら整理し考察した.そして岩盤を材料としての見方で区分する“基本岩盤分類”と目的を持って具体的な構造物の設計,施工につながる“応用岩盤分類”という考え方を示した.さらに,既存資料の活用について,一般化と個別化の観点を入れて考察し指針や規準,設計標準示方書などの位置け,施工に関する内容も加えているトンネル地山分類等の位置づけについても言及した.最後に,基本岩盤分類と応用岩盤分類をつなぐ適切な手法の研究をはじめ,今後の検討課題とその方向について考察した.

幾春別川「桂沢ダム」周辺の白亜系についての研究
Study on the Cretaceous System around the Katsurazawa Dam on the Ikushumbetsu River
深田淳夫
FUKADA Atsuo

要旨:現在は桂沢湖とよばれる人工貯水湖のもとに没しているが,筆者が,ダム建設(昭和32年)以前に踏査したルートマップをもとにして,桂沢ダムサイト周辺の地質図(縮尺5000分の1)を作成した.その図面上に,アンモナイト,イノセラムス等の化石産地をプロットして,本地域に分布する白亜系中上部蝦夷層群の分布をあきらかにした.さらに,GS2(Second Green Sandstone)とよばれる鍵層について,その岩相とメガフォシルとの関係について若干の考察を試みた.
キーワード: 北海道,幾春別,白亜系,桂沢ダム,チュ-ロン階

日本におけるスプレッドタイプ地すべりの事例
Examples of spread type landslides in Japan
大八木規夫
OYAGI Norio

要旨:スプレッドタイプの地すべりに関しては,日本ではこれまで兵庫県三田盆地の古第三系神戸層群における1例をのぞいて報告がなかった.しかし,房総半島では関東大地震のときに沖積地においてスプレッドタイプの変動が発生していたことが明らかになり,福島県更新世の塔のへつりカルデラ,新潟県中央部新第三系,長崎県第三系北松地すべり地域などにおいてもスプレッドタイプの地すべりの事例が多数見い出された.これらの地形的特徴を記載するとともに,地質的素因および運動像とくに運動速度について考察し,さらに防災上の問題点を検討した.地震時には地すべり災害防止の上で斜面に接した微少の傾斜を持つ沖積地が問題になる.また,第三系の地すべり地域では現状ではほぼ安定状態にある.しかし,スプレッドタイプ地すべり地形の中に集落が立地している場合が多く,誘因によっては再活動を引き起こし,災害となる可能性がある.
キーワード:スプレッド,沖積層,カルデラ堆積物,第三紀堆積岩,速度階,伸展係数
Keywards: spread, alluvial deposits, caldera deposits, Tertiary deposits, velocity class, spread ratio

香川県小豆島の花崗岩類に発達するラミネーションシーティングのロックコントロールと構造規制
The rock control and structural control of lamination sheeting of granitic rocks of Shodoshima Island,Kagawa prefecture
藤田勝代
FUJITA Masayo

要旨:小豆島池田町に分布する吉野花崗閃緑岩体と小豆島アダメロ岩体に発達するラミネーションシーティングのロックコントロールと構造規制を解明した.両花崗岩体は,ラミネーションシーティングの発達していない花崗岩マグマ起源のアプライト脈や閃長岩岩脈のほか,花崗岩体の冷却末期に貫入した塩基性~酸性岩脈群などの板状岩体によって細かく分断されているが,両花崗岩体中のラミネーションシーティングは花崗岩体ごとに一定の発達間隔で一様に発達しており,岩脈類の存在がラミネーションシーティングの発達を妨げるということはまったくない.ラミネーションシーティングの発達する岩石としない岩石の比較から、石英含有量と構成鉱物の粒度組成がラミネーションシーティングの発生をロックコントロールしていることが明らかになった.閃緑ヒン岩岩脈や粗粒閃長岩岩脈といった石英含有量に乏しい岩石や,アプライト脈のような細粒の岩石,斑晶は大きくても細粒石基をもつ各種斑岩岩脈にはラミネーションシーティングは発達していない.小豆島アダメロ岩体よりも吉野花崗閃緑岩体のラミネーションシーティングの発達間隔が広くなる要因は,極微小粒状結晶粒の集合体の存在によって示すような粒度組成のロックコントロールが主因となっている.ラミネーションシーティングの発達方向は基本的には低角度方状節理面の構造規制を受けており,地形面の規制は受けていない.また,従来考えられているようなラミネーションシーティングと地形面との構造的関係を示すモデルは,成立していない.
キーワード:ラミネーションシーティング,花崗岩類,ロックコントロール,構造規制,低角度方状節理面
keyword:lamination sheeting,granitic rocks,rock control,structural control,sub-horizontal joint