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理事長挨拶

理事長就任のご挨拶

代表理事 理事長 松田博貴

 去る6月24日に定時評議委員会および理事会が開催され,不肖私が千木良理事長の後任として,新たに理事長を拝命することとなりました.まだまだ未熟な私でありますので,皆様のご指導とご鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます.

 深田地質研究所は,昭和29年(1954年)に故深田淳夫氏を中心に,「地質工学の創造」を理念に掲げ,我が国初の民間の研究所として設立され,財団法人の認可を受けました.平成23年(2011年)には,「地質学や地球物理学等を基盤とする総合地球科学の研究,及び環境,防災,建設等社会発展に係る科学・技術の研究,ならびにそれらの融合的な研究を進めることにより,複合的な地球システムへの理解を増進し,その研究等の活動を継承する専門家の教育・人材育成及び研究助成活動を行うとともに広範な国際交流を通して,これらの先進的成果を社会に広く普及せしめ,もって社会の持続的な発展に寄与することを目的とする」公益財団法人となりました.この趣旨に基づき深田研では,研究,普及,育成,ならびに助成・顕彰の4つの事業を展開してきました.基礎的な地球科学分野の研究のみならず,社会発展の基盤をなす地質工学関連の技術開発を推し進めるとともに,広く社会に最新研究や技術開発の成果を普及・紹介するために「深田研講座」や「深田研談話会」を開催して参りました.また次世代を担う研究者・技術者育成のために「深田研究助成」と「深田野外調査助成」を設け,毎回,多くの方々から応募いただいております.また「深田研一般公開」や「ジオ鉄」,「アンモナイトアクセサリー」等を通して,市民の方々や児童・生徒の皆様に地球科学の魅力について伝えるとともに,社会基盤や防災,資源・エネルギー開発等に不可欠な地質工学の重要性についても,広く認知していただけるよう努力してまいりました.

 この数年,新型コロナ禍や様々な技術革新により,私たちの生活は大きく変容してきました.WEB会議や在宅勤務,またオンライン授業などが浸透し,場所を選ばず仕事や学習ができるようになりました.またドローンの発達により地形・災害調査も迅速・安全にできるようになり,さらにデータ科学の進展とAIやVR等の進歩により,多様な知識や情報の取得や疑似体験も容易となりました.反面,人と人,あるいは人と自然との距離が大きくなってしまった気がいたします.一方,自然界は地球温暖化による環境変化が顕著であり,気象現象は極端化しつつあります.それに伴う自然災害も激甚化し,これまでに経験したことがないような事象が頻繁に起こってきています.このように急激に変化しつつある複雑な地球システムに対応するためには,改めて自然に対し真摯に向き合い,観察・理解し,新たな知識の蓄積と解決法の模索が重要となってきます.少子高齢化による人材不足の波は私たちの分野にも押し寄せてきています.地質工学は,環境,資源,防災,国土保全等の社会全体に関わる諸課題を解決するために不可欠な学際的・横断的科学分野です.そのためにも研究のみならず,豊富な知識と経験を有する専門家の教育と人材育成,加えて成果の社会への還元・普及が深田研の大きな使命と考えています.

 閑静な住宅街の中,ドイツ・ミルテンブルグ産の三畳系赤色砂岩(New Red Sandstone)に包まれた所屋は,地質研究所にふさわしい姿,佇まいです.その姿に恥じぬよう,研究事業や技術開発の成果を広く社会に還元していくと同時に,地質学やその周辺領域のおもしろさや大切さを社会へ伝えていきたいと考えています.どうか皆様のご支援のほど,よろしくお願い申し上げます.

2025年7月16日