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理事長挨拶

理事長 千木良雅弘

代表理事 理事長 千木良雅弘

2020年7月1日から新しく深田地質研究所の理事長をおおせつかりました。深田研は昭和29年(1954年)に故深田淳夫氏を中心として、地質工学の創造、地質学の普及、地質技術者の職域の開拓を旗印に財団法人としてスタートしました。発足42年後の平成8年(1996年)には、ドイツの三畳紀の赤色砂岩を使って、地質研究所の名にふさわしい新たな建屋に生まれ変わりました。その15年後の平成23年(2011年)には、「地質学や地球物理学等を基盤とする総合地球科学の研究、及び環境、防災、建設等社会発展に係る科学・技術の研究、ならびにそれらの融合的な研究を進めることにより、複合的な地球システムへの理解を増進し、その研究等の活動を継承する専門家の教育・人材育成及び研究助成活動を行うとともに広範な国際交流を通して、これらの先進的成果を社会に広く普及せしめ、もって社会の持続的な発展に寄与することを目的とする」ことを新たに社会に約束し、公益財団法人の認可を受けました。そして、その趣旨に基づいて研究、普及、育成、助成・顕彰の4つの事業を続けてきました。深田研談話会と深田研ジオフォーラムは、毎回ほぼ満席のご参加を得、また、深田研究助成、さらに一昨年から始めた深田野外調査助成は多くの方に応募いただき、いずれも好評を博し、成果が上がっているものと自負しております。深田研創設以来、多くの社会的な変化がありましたが、その中でも現在我々は極めて大きな変化の中にいます。今年に入って猛威を振るっている新型コロナウィルスは、社会を急変させ、未だに止まるところを知りません。豪雨による洪水や土砂災害が頻繁に起こり、また、次の巨大地震は目の前に迫っています。さらに、資源の安全保障、原子力エネルギー、特に高レベル放射性廃棄物処分など、いずれも地質学や地球物理学に基づく複合的な地球システムの理解が不可欠の課題が緊喫のものとなってきています。高等教育では、より先鋭化した課題の優先、一部のプログラムを除いて社会の要求に答える意識の希薄化、地質学の地球惑星科学への埋没、研究者の職の欠乏、企業のOJTの機会減少も大きな問題です。さらに、地質学はそれなりに普及が進んでいるのに対して、地質工学あるいは応用地質学の認知度は高くなく、技術士の応用理学のほとんどを占める地質技術者のおかれた環境や地位は満足できるものとは言えません。今のような変化の時こそ、深田研の存在意義を発揮すべきと思っています。一度立ち止まって、来し方行く末を考え、これらの課題を乗り越えてさらに次に進む大きなチャンスでもあると考えています。

インターネットは2000年代頃から大きく社会を変えてきましたが、今年に入っての遠隔会議の活用などは、さらなる変革をもたらし、ますますの情報化社会を招来しています。深田研においても、活動の結実でもある出版物などを積極的にウェブ公開して社会に発信し、地質学・応用地質学の普及、地質技術者の育成に取り組んでいきます。

伝統を重んじ、かつ過去にとらわれない前を向いた運営、ベテランの知恵とネットワーク、若手研究者の情熱と意欲が生かされる地質研究所らしい運営を目指します。どうかご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2020年7月15日